日本で働く人々の命が、今この瞬間も失われ続けています。
厚生労働省が発表した2024年度のデータによると、過労死等の労災支給決定件数は1,304件と過去最多を記録しました。
うち死亡・自殺関連は159件にのぼり、前年度から増加傾向にあります。
しかし、これは氷山の一角に過ぎません。
労災認定されない「見えない過労死」を含めると、実際の死者数はこの数字を大幅に上回ると専門家は指摘しているのです。
世界に目を向けると、WHOとILOの共同研究では、長時間労働が原因で年間74万5千人が亡くなっていると推計されています。
この深刻な状況を、私たちはどう受け止め、どう変えていくべきなのでしょうか?
それでは早速本題に入りましょう。
過労死の年間死者数が深刻極まりない!

過労死の年間死者数は、公式統計が示す以上に深刻な状況にあります。
多くの人が「過労死は特殊なケース」と考えがちですが、実態は私たちの想像をはるかに超えているのです。
2024年度の過労死等の労災支給決定件数は1,304件で、これは過去最多の数字となりました。
このうち死亡・自殺関連は159件で、2023年度の137件から22件も増加しています。
精神障害によるものが大半を占め、脳・心臓疾患は247件程度という内訳です。
支給決定件数 1,304件 (前年度比196件の増加)
出典:厚生労働省
うち死亡・自殺(未遂を含む)件数 159件(前年度比 21件の増加)
厚生労働省のデータは、あくまで労災認定されたケースのみを示しています。
過労死弁護団の相談件数は年間数百件を超えており、認定に至らないケースや、そもそも申請すらされない「隠れた過労死」が多数存在することが指摘されているのです。
白書などでは脳血管・心疾患による総死亡数は年間数万人規模とされ、過労が関与する割合が高いものの、因果関係の証明が難しく認定に至らないケースが大半なのです。
電通の新入社員だった女性社員さんの過労自殺事案は、社会に大きな衝撃を与えました。
1か月100時間を超える残業を続けた末に自ら命を絶ったこの事件は、長時間労働だけでなく、上司との関係や職場文化など複合的な要因が重なって悲劇に至ったケースです。
若手で高学歴、やりがいのある仕事に就いていても、制度と文化が毒であれば命を奪われる――この事実は、過労死が誰にでも起こりうる問題であることを示しています。
約2日に1人亡くなる異常な状態をどう止める

過労死を止めるためには、個人の努力だけでなく、社会全体の構造的な変革が必要です。
「働き方改革」という言葉は広まりましたが、実態はまだまだ追いついていません。
過労死をゼロに近づけるには、法律・行政、企業、現場の管理職、働く個人、そしてメディアの5つのレイヤーすべてが変わる必要があるのです。
単なる労働時間の上限規制だけでは不十分で、働き方の質そのものを見直さなければなりません。
WHOとILOの共同研究では、週55時間以上働くと脳卒中リスクが35%上昇し、心臓病死亡リスクが17%上昇することが明らかになっています。
長時間労働は睡眠不足を引き起こし、交感神経の過剰亢進や血圧上昇といった身体的なダメージを蓄積させます。
24時間のうち、睡眠・通勤・家事を引くと「自分のための時間がほぼ消える」働き方が、確実に命を削っているのです。
具体的な対策として、企業は労働時間の厳格な管理と、実効性のある残業削減策を導入する必要があります。
現場の管理職は、部下の労働時間だけでなく、精神的な負担にも目を配らなければなりません。
働く個人も、「弱音を吐くな」「やりがいがあるだろう」という空気に流されず、自分の健康を最優先に考える勇気が求められます。
そして行政は、労災認定のハードルを下げ、相談窓口を充実させることで、泣き寝入りする家族を減らす取り組みが不可欠です。
興味深いのは、AI・自動化の時代に入っているにもかかわらず、人だけが24時間働き続けている矛盾です。
生産性向上や自動化で仕事量を減らせるはずなのに、逆にメール・チャット・リモート会議で「24時間つながる労働」が拡大しているという皮肉な状況が生まれています。
テクノロジーは本来、人間を労働から解放するためのものだったはずです。
しかし現実には、「人を減らして長時間労働をさせる経営」が横行し、テクノロジーが過労死を加速させる道具になってしまっているのです。
まとめ!
今回は、過労死の年間死者数が深刻極まりないこと、国内では約2日に1人が亡くなっている異常な状態についてお伝えしてきました。
2024年度の過労死等の労災認定は1,304件と過去最多を記録し、死亡・自殺関連は159件に達しました。
しかし労災認定は氷山の一角に過ぎず、実際の過労死者数はこの数字を大幅に上回ると推測されます。
ここで触れておきたいのが、今年の「新語・流行語大賞」で高市首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という発言が年間大賞に選ばれたことです。
年間159人もの方が過労で命を落とし、認定されない「見えない過労死」を含めればさらに多くの人が亡くなっている現状。
そんな状況を考えると、我々は「流行語大賞」などと持て囃している場合ではないのではないでしょうか。
この言葉が「美徳」として受け入れられる社会の空気こそが、過労死を生み出す土壌になっているとも捉えられます。
国全体で、働きすぎを美化する文化を見直し、命を守ることを最優先にする意識を共有すべき時が来ています。
最後に指摘したいのは、「働きすぎで倒れない人だけが残る社会」の危険性です。
過労死が表面化する前に「辞めていく」人や「病気でも出勤し続ける」人が多数存在し、結果として超人的な労働に耐えられる少数だけが生き残る「職場の自然淘汰」が起きています。
これは統計には出てこない文化の問題であり、「自己責任」という言葉が企業側の責任や構造問題を覆い隠す”見えない暴力”として機能しているのです。
私たち一人ひとりが、この異常な状態を「普通」だと思わないこと、そして声を上げ続けることが、過労死をゼロに近づける第一歩になるのではないでしょうか。
それでは、ありがとうございました。

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